40年間努力を積み重ね“名前も産地も伏せられた品評会”で『金賞』に選ばれたみかんの理由
公開日:2026年10月26日
こんにちは。よかもーるスタッフの和田です。
みなさんは「全国ミカン選手権」をご存じでしょうか?
食のプロである野菜ソムリエたちが、先入観を排すため「名前も産地も伏せた状態」で審査する、まさに“味だけで勝負”される品評会です。
全国から選りすぐりのミカンが集まるこの厳正な品評会で、見事『金賞』に選ばれたのが、熊本県和水町・持丸園の「持丸みかん」。
全国に名だたる産地がある中で、なぜ持丸みかんは高く評価されたのか。
今回は、現地でのインタビューをもとに、その“おいしさの理由”に迫ります。
甘すぎない。絶妙な甘さと酸味がもたらす“忘れられない味”
持丸みかんをひと言で表すなら、「一度食べたら忘れられない、本格派の味わい」。
口に含むとまず感じるのは、澄んだ甘さ。そしてすぐ後から追いかけてくる、心地よい酸味。
甘さだけが前に出るのではなく、甘味と酸味がきれいに溶け合うことで、あと味が驚くほど軽やかです。
「何個でも食べられる」
「気づいたら手が伸びている」
そんな声が全国のファンから届く理由は、この絶妙なバランスにあります。
三代続くみかん農家。少年の情熱は畑とともに大きくなった
持丸園の代表・持丸周二さんは、祖父の代から続く三代目のみかん農家。
100年あまり続く畑で、子どもの頃から両親の背中を見て育ちました。
「もっとおいしく、もっとたくさん作りたい」
「畑を、もっと広くしたい」
そんな想いを胸に、40年以上みかんと向き合い続けてきた持丸さん。
その情熱は年々かたちとなり、現在では約10ha・およそ2万本の広大なみかん園へと成長しました。
「意識が変わっていない」——人生を変えた言葉
そんな持丸さんの「みかん作り」の観念を大きく変えたのが、師と仰ぐ宮崎県日南市のみかん作りの名工・田中憲治さんとの出会いでした。
全国の農家から尊敬される田中さんから、何度も投げかけられた厳しい言葉。
「まだ、意識が変わっていない」
教えを乞いに宮崎へ足を運ぶたびに、持丸さんは自らの作業を見つめ直し、検証と改善を繰り返してきました。
この試行錯誤の積み重ねが、持丸さんのみかん作りを大きく進化させます。
中でも心に深く残っているのが、次の言葉です。
「しんどいこと(辛いこと)をしながら育てた種は使えない」
苦労をただ耐え忍ぶのではなく、楽しみながら育てる。
作り手の心のあり方が、そのまま作物にも表れる。
この教えは、今も持丸園のみかん作りの根幹にあります。
おいしさを引き出す、持丸園ならではの畑づくり
持丸みかんの畑には、理にかなった工夫が随所に詰まっています。
● 糖度を高める植え方 一般的なみかん園よりも木と木の間隔を約1mと狭く植栽。樹同士が水分や養分を競い合うことで適度なストレスが生まれ、果実の品質が高まります。
● 排水のよい赤土と傾斜地 独立する夢をずっと抱いていた金坂さんは、満を持して福岡県柳川市でそば職人としての独立を真剣に考えていました。
● 皮と実が離れにくい果実管理 乾燥によって皮と実が浮かないよう、細やかな管理を徹底。その結果、果汁たっぷりで一体感のある果肉に仕上がります。
「人にもやさしい園」が、みかんの未来を守る
みかん農園に多い段々畑では作業機械が入りにくく、重労働になりがちです。
持丸園では、約30年前から園内の環境整備に着手しました。
機械がスムーズに入れる園内道を整え、作業効率を高めたのです。
- 作業する人の負担が軽くなる
- 全国から手伝いに来る人が集まる
- 次の世代へ引き継ぎやすい園になる
「おいしいみかんは、持続できる環境から生まれる」
“苦労を耐えるのではなく楽しむ”という田中さんの教えが、この園づくりにもしっかり息づいています。
金賞を受賞。厳しい現実と向き合いながら、未来へ
2023年、全国ミカン選手権での金賞受賞は、持丸さんにとって大きな結実となりました。
長年、自分たちが信じるおいしさを追求してきた結果が、全国舞台で証明されたのです。
丁寧に育てられたからこそ生まれる、太陽の恵みを凝縮したかのような濃厚な味わい。
ひと口で自然の豊かさを実感できます。
資材価格の高騰や人材不足など、現代の農業を取り巻く環境は決して楽ではありません。
それでも持丸園は、「もっと多くの人に、持丸みかんのおいしさを知ってほしい」という想いを胸に、前に進み続けています。
また、みかん作りで培った高い栽培技術と探求心を生かし、現在は国産キウイ栽培という新たな挑戦にも乗り出しています。
和水町の山々に囲まれた農園には、澄んだ空気と、作ることを楽しむ心から生まれる果実たち。
持丸園は今日もスタッフ皆で笑顔で畑に立ち続けています。
最後に
今回の取材で何より強く感じたのは、「本当においしいものを作りたい」という純粋で真っ直ぐな想いです。
師匠からの教えを胸に刻み、ただ苦労を重ねるのではなく、前向きな挑戦と工夫へと変えて実践してきた歩み。
からこそ、18歳から始まった持丸さんの挑戦が『金賞』という形で結実したのだと感じます。
「味への追求は、まだまだ道半ばです」 持丸さんのこの言葉が、とても印象に残っています。
持丸みかんには、親子三代にわたり受け継いできた想いと、一筋に向き合い続けてきた情熱が詰まっています。
ぜひ一度、そのやさしく奥深い味わいを体験してみてください。